ご挨拶
記録映画保存センターは2009年の発足以来、記録映画会社の倒産等により放置または廃棄寸前となった多くの記録映画フィルムを保存する活動を行ってまいりました。倉庫整理、作品のリスト化、権利確認等を進めながら、フィルムセンターへ寄贈したフィルム原版の数は、約5年間で1万缶以上に及びました。
フィルムは常温での保管は難しく、多くのフィルムがビネガーシンドロームと呼ばれる酢酸ガスの汚染にさらされています。所有権者不明等の問題から、未だフィルムセンターへの寄贈手続きができないフィルムも数多く現存し、これらは本来一刻も早く安全な場所に移さなければなりません。このようなオーファン(孤児)フィルムについては、法律の専門家、研究者、映像業界各団体等と長年検討を続けてまいりましたが、法律の壁がありなかなか前へ進んでおりません。貴重な映画フィルムがひとつでも多く守られるよう、今後も働きかけ続けていく必要があると考えています。
また近年、文化庁の支援を得て行った全国の文化施設所有のフィルム所在調査でも、数万タイトルにおよぶフィルムが予算等の事情から常温管理され、劣化が進んでいる実態も明らかになりました。私たちは、これら貴重な映画フィルムが朽ち果てることなく、後世に受け継がれていくよう努めてまいります。
皆さまのご支援、ご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
記録映画保存センター・事務局長 村山英世
2009年7月 市ヶ谷の事務所開設時