「佐久間ダム」カラーフィルム復元

Sakuma Dam Restoration

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「佐久間ダム」を用いた退色カラーフィルム復元の試み

岩波映画製作所の代表作の一つである『佐久間ダム第一部』(企画:電源開発株式会社)は、総集編の製作時にネガが切り崩されたため、ネガ原版が現存していません。そこで記録映画保存センターでは、退色した第一部の16mmプリントと総集編のネガ原版を組み合わせ、可能な限りカラーの復元を試みました。本ページでは、その復元作業の工程を振り返りながらご紹介します。

復元の目的

記録映画『佐久間ダム 第一部』(38分)は、1954年5月に完成しました。公開後は皇室や政府関係者にも上映され、その後全国の映画館で公開されました。観客動員数は300万人に達し、戦後日本の記録映画としては画期的な大ヒット作品となりました。

上映ポスター

上映ポスター

佐久間ダムの映画は、工事の進行に合わせて、2部、3部と作られ、1958年に3作をまとめた96分の総集編が製作されました。しかし、総集編を製作する際、第一部のオリジナル原版は流用されてしまい1部は消滅。以降複製を作ることができなくなりました。

タイトル画面

タイトル画面

この映画が撮影された1953年は連合国の占領が終わったばかりで、戦後の傷跡がまだ残る時代でした。人々は未来への希望を求めており、『佐久間ダム』は日本の復興を象徴する作品として、多くの人々に勇気と自信を与えました。

失われた『佐久間ダム第一部』をよみがえらせ、当時の多くの人が感動して見た映画の元の姿を後世に伝えることを目的に2020年文化庁の支援を受け復元作業に取り組みました。

製作された時代背景

戦後復興を進める日本のエネルギー不足を解決するため水力発電の開発が国家的な課題となっていました。

佐久間ダム建設は、世界銀行からの融資を受け、アメリカの最新土木技術や建設機械を導入して進められた国家プロジェクトです。その工事は当時としては驚異的な速さで進められ、日本復興の象徴となりました。

ドリルジャンボによるトンネル掘削

ドリルジャンボによるトンネル掘削

『佐久間ダム 第一部』という作品

『佐久間ダム』は、日本の映画界にとって初の本格的なカラー長編記録映画であり、岩波映画も現像を担当した東洋現像所(現 IMAGICAエンタテインメントメディアサービス)にとっても記念すべき作品でした。

撮影を担当した小村静夫は、この後、羽仁進監督と名作『教室の子供たち』を撮影しています。また、音楽を担当した伊福部昭は、同じ1954年秋に公開された映画『ゴジラ』の音楽を手がけました。

さらに、後に映画監督となる黒木和雄も、この作品で初めて撮影現場に参加し、映画人としての第一歩を踏み出しています。

米国製ユークリッド社ダンプの前で 右 小村静夫 中央 黒木和雄

米国製ユークリッド社ダンプの前で 右 小村静夫 中央 黒木和雄

復元作業の第一段階

まず、復元は『佐久間ダム 第一部』の16ミリ上映用プリント探しからはじまりました。

その結果、4本のプリントの存在が確認されましたが、いずれも半世紀をへておりカラーが大きく退色していました。特に青(B)と緑(G)の色成分が失われ、画面全体が赤(R)みの強い単色に近い状態になっていました。

比較検討した結果、最も傷の少ない神戸映画資料館所蔵の16ミリプリントを復元に使用することしました。

佐久間ダム第一部16ミリプリント

佐久間ダム第一部16ミリプリント

退色して赤くなったフィルム

退色して赤くなったフィルム

次に、このプリントと1958年製作の総集編を比較したところ、総集編には第一部の映像が14分使用されていました。

復元方法

今回の復元作業は、退色した16ミリプリントにわずかに残っている色彩情報を最大限に引き出し、総集編に残されていた35ミリオリジナルネガの映像を色の基準として補正を行いました。また、35ミリと16ミリでは画面サイズが異なるため、まず35ミリ映像を16ミリのサイズに合わせて位置や大きさを調整しました。

35ミリ右と16ミリフィルム

35ミリ右と16ミリフィルム

さらに両者は画質も大きく異なるため、16ミリ映像に対して以下の手順で色補正を行いました。
•コントラスト調整
•ゴミや汚れの除去
•フィルムの揺れや明るさの変動の補正
•フィルムの裂け目の修復
•ノイズの軽減
これらの処理によって、16ミリプリントの画質は大きく改善されました。

補正前と補正後

補正前と補正後

大きな問題は総集編の残された14分の映像は前後映像が少しカットされて第1部より短くなっていました。そのため失われた前後の映像部分は劣化した16ミリ版で継ぎ足しせざるを得ませんでした。そこで同一カット中で劣化した16ミリ画質と高画質の35ミリ画質の段差を無くす作業に時間がかかりました。

最終的に16ミリと35ミリ映像との画質の段差を少なくするため、35ミリ側の彩度をあえて下げて、違和感のない自然な感じに仕上げました。

復元の成果

今回の復元作業によって、長年失われていた『佐久間ダム 第一部』は公開当時の画面からくる熱気を再現することができました。

IMAGICA(現 IMAGICAエンタテインメントメディアサービ)の作業

IMAGICA(現 IMAGICAエンタテインメントメディアサービ)の作業

今後さらに画面の傷やノイズを除去し、色彩を細かく調整することで、オリジナルにより近い映像へ仕上げることが期待されます。また、将来的この復元データ使用して35ミリフィルムを新たに製作することが出来ます。

今回の成果は、『佐久間ダム』だけでなく、全国各地に数多く残されている退色したカラーフィルムについても、デジタル技術によって再び鑑賞できる可能性を示すものとなりました。

米現在の佐久間ダム

現在の佐久間ダム

編集:一般社団法人 記録映画保存センター 2026年

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